「子どもの視力がどんどん落ちていく」「自分の近視がまだ進んでいる気がする」。近視の進行に対する不安は、年齢を問わず多くの方が抱えています。
近年、近視の進行を抑える方法についての研究が世界中で進んでおり、科学的な根拠に基づく対策がいくつか確立されてきました。この記事では、子どもから大人まで活用できる近視進行抑制の方法を、エビデンスとともに整理してお伝えします。

近視はなぜ進行するのか
近視の進行は、主に眼球の前後の長さ(眼軸長)が伸びることによって起こります。眼軸が伸びると、網膜上で正しくピントが合わなくなり、遠くのものがぼやけて見えるようになります。
近視が進行する要因としては、以下のことが知られています。
- 遺伝的要因:両親が近視の場合、子どもの近視リスクが高まる
- 近業の増加:スマートフォンやタブレットの長時間使用
- 屋外活動の減少:太陽光を浴びる時間が減ることで進行リスクが上がる
- 成長期の影響:身体の成長とともに眼軸も伸びやすい
特に子どもの場合は、身体の成長期に合わせて眼軸も伸びるため、6歳〜18歳頃が最も近視が進行しやすい時期とされています。
方法1:低濃度アトロピン点眼
近視の進行抑制治療として、世界で最も広く研究され実施されているのが低濃度アトロピン点眼です。
アトロピンはもともと瞳孔を開く検査薬として使われていた成分ですが、濃度を0.01%〜0.05%に薄めた低濃度の点眼液が、近視の進行を抑える効果があることが複数の臨床研究で確認されています。
低濃度アトロピン点眼のポイント
- 点眼を始めた最初の1年間で、近視の進行をおよそ30〜70%抑制する効果が報告されている
- 2024年12月に厚生労働省の承認を取得し、2025年4月に参天製薬のリジュセアミニ点眼液0.025%が国内で販売開始
- 1日1回の就寝前点眼で、副作用が少ないとされている
- 主に6歳以上の子どもが対象(クリニックにより異なる)
従来は自費診療のみでしたが、承認薬の登場により今後の保険適用の可能性にも注目が集まっています。詳しくは日本近視学会のサイトで最新情報を確認できます。

方法2:オルソケラトロジー
オルソケラトロジーは、就寝時に特殊なハードコンタクトレンズを装用して角膜の形状を整える治療法です。日中は裸眼で過ごせるだけでなく、近視の進行を抑制する効果も複数の研究で報告されています。
通常のコンタクトレンズや眼鏡と比較して、眼軸の伸びを30〜50%程度抑制できるとするデータがあります。スポーツをするお子さんや、日中にメガネやコンタクトなしで過ごしたい方に適した方法です。
オルソケラトロジーのレンズは、必ず眼科医の処方のもとで使用してください。不適切な使用は角膜トラブルの原因になることがあります。また、定期的な通院も必要です。
方法3:近視管理用眼鏡レンズ
近視進行抑制を目的とした特殊な眼鏡レンズも、近年注目を集めています。HOYA社のMiYOSMARTやNikon-Essilor社のStellestなどが代表的な製品です。
これらのレンズは、中心部で通常の視力矯正を行いながら、周辺部に特殊な処理を施すことで、眼軸の伸長を抑制する仕組みです。海外では既に広く使用されており、日本でも2026年6月から使用できるようになっています。
手術やコンタクトレンズに抵抗があるお子さまにとって、眼鏡をかけるだけで近視進行を抑制できるという点が大きなメリットです。

方法4:屋外活動を増やす
シンプルですが科学的根拠のある方法として、屋外で過ごす時間を増やすことが挙げられます。複数の大規模研究で、屋外活動が多い子どもは近視になりにくいこと、また既に近視の子どもでも進行が抑えられることが確認されています。
屋外活動の推奨時間
- 1日2時間以上の屋外活動が推奨されている
- 太陽光に含まれるバイオレットライトが眼軸の伸長を抑制する可能性が指摘されている
- ドーパミンの分泌促進が近視進行抑制に関与しているとする説もある
- 直射日光でなくても、屋外の明るい環境であれば効果が期待できる
台湾では政策的に子どもの屋外活動時間を増やす取り組みが行われ、近視の有病率が低下したという報告もあります。近視予防に関する情報は親子で学ぶ近視予防サイト(日本近視学会監修)でもわかりやすくまとめられています。
方法5:近業の管理
近くのものを見続ける作業(近業)の時間を管理することも重要です。
- 30cmルール:本やスマートフォンは目から30cm以上離して見る
- 30分ルール:30分に1回は遠くを見て目を休める
- 姿勢の改善:前かがみにならず、正しい姿勢で読書やデスクワークを行う
特に子どもの場合、タブレット学習やゲームの時間を適切に管理することが近視進行の抑制に重要です。

方法6:レッドライト療法(研究段階)
比較的新しい治療法として、低出力の赤色光を照射する「レッドライト療法」が注目されています。中国を中心に臨床研究が進められており、眼軸の伸長抑制に有効とする報告がありますが、まだ長期的な安全性や効果については確立されていない段階です。
一部の眼科クリニックで導入が始まっていますが、現時点ではあくまで研究段階の治療法であることを理解しておく必要があります。
大人の近視進行について
近視は成長期に進行するイメージが強いですが、成人後もデスクワークなどの環境要因で進行するケースがあります。大人の場合の対策としては以下が考えられます。
- 20-20-20ルールの実践
- 適切な照明環境の確保
- 定期的な眼科検診
- 度数が変わったらメガネやコンタクトを適切に更新する
大人の場合、低濃度アトロピン点眼やオルソケラトロジーの適応は限定的ですが、近視の矯正方法としてレーシックやICLも選択肢になります。詳しくは新宿近視クリニックなどの専門機関のサイトで確認できます。
成人後に急に近視が進んだ場合は、白内障や円錐角膜などの病気が隠れている可能性もあります。必ず眼科を受診してください。
よくある質問
Q. 低濃度アトロピン点眼はいつまで続けるのですか?
A. 一般的には2年以上の継続が推奨されています。治療期間や中止のタイミングは、眼科医と相談して個別に判断することが大切です。
Q. 近視進行抑制の治療は保険が適用されますか?
A. 2026年6月より、リジュセアミニ点眼液は選定療養の対象となり、診察料・検査料に保険が適用されるようになりました。ただし薬剤費は自費負担です。オルソケラトロジーは引き続き自費診療が中心です。
Q. サプリメントで近視の進行を抑えることはできますか?
A. サプリメントだけで近視の進行を抑制できるという十分なエビデンスは現時点ではありません。ルテインやビタミンAなどは目の健康維持に寄与するとされていますが、近視進行の直接的な抑制効果とは区別して考える必要があります。
まとめ
近視の進行を抑える方法として、低濃度アトロピン点眼・オルソケラトロジー・近視管理用眼鏡・屋外活動・近業管理の5つが現在主流のアプローチです。これらは科学的な根拠に基づいており、特に子どもの近視進行抑制については確かなデータが蓄積されてきています。
お子さまの近視が気になる方は、早めに眼科を受診して専門医と治療方針を相談することをおすすめします。


