「ものが二重に見える」「夜の運転がやけに見づらい」──そんな症状を感じたことはありませんか。もしかすると、それは乱視が原因かもしれません。
乱視は日本人に非常に多い屈折異常のひとつで、程度の差はあれど多くの方が持っているとされています。ただ、いざ「矯正しましょう」と言われても、メガネ・コンタクトレンズ・手術などさまざまな方法があり、自分に合った選択肢がわからないという声も少なくありません。
この記事では、乱視が起きるしくみや原因をやさしく解説しながら、あなたに合った矯正方法を見つけるためのポイントをまとめています。乱視で悩んでいる方、あるいは「乱視と言われたけど放っておいてもいいの?」と気になっている方はぜひ最後まで読んでみてください。
そもそも乱視とは?見え方のしくみを知ろう
乱視とは、角膜(目の一番外側にある透明な組織)や水晶体(ピントを合わせるレンズの役割をする部分)がゆがんでいるために、光が網膜上の一点に集まらず、ものがぼやけたり二重に見えたりする状態のことです。
正常な目では角膜がきれいな球面を描いていますが、乱視がある目ではラグビーボールのように縦と横でカーブの度合いが異なります。そのため、縦方向と横方向でピントが合う位置がずれてしまい、像がにじんで見えるのが特徴です。
近視や遠視が「ピントの合う位置が前後にずれる」のに対し、乱視は「方向によってピントの合う位置が違う」という点が大きな違いです。近視と乱視、あるいは遠視と乱視が同時に存在するケースも珍しくありません。

乱視の種類──「正乱視」と「不正乱視」の違い
乱視は大きく分けて「正乱視」と「不正乱視」の2種類があります。それぞれ原因や矯正方法が異なるため、まずは自分がどちらのタイプなのかを眼科で確認することが重要です。
正乱視
角膜や水晶体のカーブが方向によって規則的に異なる状態です。正乱視はさらに以下の3タイプに細分化されます。
- 直乱視:縦方向のカーブがきつい。日本人に最も多いタイプ
- 倒乱視:横方向のカーブがきつい。加齢とともに増える傾向
- 斜乱視:斜め方向にゆがみがある。比較的まれ
正乱視はメガネやコンタクトレンズの円柱レンズで矯正が可能です。
不正乱視
角膜の表面が不規則にでこぼこしているために起きる乱視で、メガネや通常のソフトコンタクトレンズでは十分に矯正できないのが特徴です。円錐角膜や角膜外傷、角膜移植後などに見られることがあります。不正乱視の矯正にはハードコンタクトレンズが用いられることが多いです。
乱視の主な原因
乱視の原因は複数あり、先天的な要因と後天的な要因の両面から理解しておくことが大切です。
先天的な原因
生まれつき角膜のカーブにわずかなゆがみがあるケースです。実はほとんどの人が多少の乱視を持っていると言われていますが、軽度であれば視力に大きな影響を与えないため、気づかないまま生活している方も多くいます。遺伝的な要因が関与しているとされていますが、詳しいメカニズムはまだ解明されていない部分もあります。
後天的な原因
- 加齢:年齢を重ねると角膜の形状が変化し、倒乱視が増加する傾向があります
- 目の外傷や手術:角膜に傷がつくと不正乱視が生じることがあります
- 眼疾患:円錐角膜や翼状片(白目の組織が黒目に侵入する病気)などが乱視の原因になることがあります
- 目をこする癖:強く目をこすることで角膜が変形するリスクが指摘されています
目をこする癖がある方は要注意です。花粉症やアレルギー性結膜炎で目がかゆいときは、こすらずに冷やしたタオルをあてたり、点眼薬を使ったりして対処しましょう。
乱視の矯正方法を比較──メガネ・コンタクト・手術
乱視の矯正方法は主に3つあります。それぞれの特徴を把握して、ライフスタイルや乱視の程度に合ったものを選びましょう。
メガネ(乱視用レンズ)
最も手軽でリスクが低い矯正方法です。円柱レンズと呼ばれる特殊なレンズを使い、ゆがみの方向に合わせて光の屈折を補正します。
メリット
- 目に直接触れないため感染症のリスクがない
- ケアが簡単で維持費が比較的安い
- 度数の変更が容易
デメリット
- 強い乱視の場合、レンズが厚くなり見え方にゆがみが出ることがある
- スポーツや作業時に不便な場合がある
- 視野がフレームで制限される
コンタクトレンズ(トーリックレンズ)
乱視用のコンタクトレンズは「トーリックレンズ」と呼ばれ、レンズの向きが一定に保たれるよう設計されています。ソフトタイプとハードタイプがあり、乱視の種類や程度によって使い分けます。
メリット
- メガネよりも自然な視界が得られる
- スポーツや運動に適している
- 見た目を気にせず使える
デメリット
- レンズの回転により見え方が不安定になることがある
- ドライアイの方には不向きな場合がある
- 毎日のケアが必要(1dayタイプを除く)

手術(レーシック・ICL)
より根本的に乱視を矯正したい場合は、手術という選択肢もあります。
レーシック:エキシマレーザーで角膜を削って形状を整えます。正乱視であれば高い矯正効果が期待できます。ただし角膜の厚さなど適応条件があります。
ICL(眼内コンタクトレンズ):目の中にレンズを挿入する方法です。角膜を削らないため可逆性があり、強度の乱視にも対応できるレンズがあります。
いずれの手術も、事前の適応検査で乱視の種類や程度を正確に測定することが必須です。術式の選択は眼科専門医としっかり相談しましょう。
乱視を放置するとどうなる?
「軽い乱視なら放っておいても大丈夫では?」と思う方もいるかもしれません。確かに、日常生活に支障がないレベルの乱視であれば、すぐに矯正が必要とは限りません。
しかし、矯正しないまま過ごすと以下のような問題が生じる可能性があります。
- 慢性的な眼精疲労や肩こり・頭痛の原因になる
- ピントを合わせようとして目を細める癖がつく
- 子どもの場合、弱視につながるリスクがある
- 見え方のストレスで集中力や作業効率が低下する
特にお子さんの乱視は、視力の発達に影響を与える可能性があるため、早期発見・早期対応が大切です。学校の視力検査で指摘を受けた場合は、必ず眼科を受診しましょう。
乱視の検査方法
乱視の検査は眼科で行います。主な検査方法は以下のとおりです。
- オートレフラクトメーター:機械で屈折度数を自動測定する検査。乱視の有無と大まかな度数がわかります
- 角膜トポグラフィー:角膜の形状を詳細にマッピングする検査。不正乱視の診断に役立ちます
- 視力検査:ランドルト環(Cの字)を使った検査で、矯正が必要かどうかを判定します
- 乱視表:放射状の線が描かれた図を見て、特定の方向の線が太く見えるかを確認します
参考として、日本眼科学会のウェブサイト(https://www.nichigan.or.jp/)でも屈折異常に関する解説が掲載されています。

乱視用コンタクトレンズの選び方
コンタクトレンズで乱視を矯正する場合、以下のポイントをチェックしましょう。
レンズの安定性
トーリックレンズは乱視の軸に合わせてレンズの向きが固定されていなければなりません。まばたきのたびにレンズが回転してしまうと、見え方が不安定になるため、安定性の高いデザインを選ぶことが大切です。各メーカーが独自の安定化デザインを採用しています。
使用サイクル
1day(ワンデー)、2week(2週間交換)、マンスリーなど交換サイクルがあります。清潔さを重視するならワンデー、コストを抑えたいなら2weekやマンスリーが選択肢になります。
含水率と酸素透過性
目の乾きが気になる方は低含水率のレンズ、長時間装用する方は酸素透過性(Dk/t値)の高いシリコーンハイドロゲル素材のレンズがおすすめです。
クーパービジョンの公式サイト(https://coopervision.jp/lessons/ranshi-toric/astigmatism)では、乱視用コンタクトレンズについて詳しく解説されています。
よくある質問
Q. 乱視は自力で治せますか?
A. 残念ながら、トレーニングやマッサージで乱視そのものを治すことは困難です。乱視は角膜や水晶体の物理的な形状に起因するため、矯正には適切なレンズや手術が必要です。ただし、眼精疲労を軽減するためのストレッチや休憩は有効です。
Q. 乱視があるとレーシックは受けられませんか?
A. 正乱視であればレーシックで矯正可能なケースが多いです。ただし、不正乱視や角膜が薄い場合は適応外となることがあります。まずは適応検査を受けることをおすすめします。
Q. 子どもの乱視は成長とともに治りますか?
A. 成長に伴い角膜の形が変化して乱視の度合いが変わることはありますが、完全になくなるとは限りません。お子さんの乱視は、弱視予防の観点から定期的な経過観察が重要です。
Q. 乱視用と通常のコンタクトレンズを兼用できますか?
A. 乱視の度数が軽い場合は、通常の球面レンズでも大きな支障がないこともあります。ただし、自己判断はせず、眼科医の処方に従って適切なレンズを選びましょう。
参考:アキュビュー公式サイト「乱視とは」(https://www.acuvue.com/ja-jp/memamori/eyesight/145/)

