「近視がどんどん進んで止まらない」「子どもの視力がどんどん下がっていく」と不安を感じている方は多いのではないでしょうか。
近視の進行を完全に止めることは難しいですが、科学的根拠のある方法を使えば進行速度を遅らせることは可能です。特に子どもの近視進行は、早い段階から対策を始めることで将来のリスクを大きく下げることができます。
この記事では、エビデンスに基づいた近視進行抑制法を、効果の高いものから順に解説していきます。

なぜ近視は進行するのか
眼軸長が伸びるメカニズム
近視は眼球が前後方向に伸びる(眼軸長が延長する)ことで起きます。本来は網膜上でピントが合うはずが、眼軸が伸びることで網膜の手前でピントが合ってしまう状態です。成長期に特に進行しやすく、大人になっても止まらないケースもあります。
一度伸びた眼軸は現在の医学では元に戻すことができないため、いかに進行を遅らせるかが重要なポイントになります。
遺伝と環境の両方が影響
両親ともに近視だと、子どもの近視リスクは約6倍になるという研究があります。ただし、遺伝だけでなく環境要因(近業時間の長さ、屋外活動の不足)も大きく影響することが分かっています。
つまり、環境を整えれば遺伝的なリスクがあっても進行を抑えられる可能性があるということです。これは希望の持てる研究結果です。
エビデンスのある近視進行抑制法
1. 屋外活動(推奨度:高)
複数の大規模研究で、1日2時間以上の屋外活動が近視の進行を抑制することが示されています。太陽光に含まれるバイオレットライトや高照度の光が、眼軸の伸びを抑える効果があるとされています。
日本眼科学会でも、子どもの近視予防として屋外活動を推奨しています。曇りの日でも室内よりはるかに明るいため、天気に関係なく外に出ることが大切です。
・1日2時間以上を目安に外で過ごす
・曇りの日でもOK(室内の10〜100倍の明るさ)
・サングラスは常時かけ続けなくてよい
・通学路を歩く、昼休みに外で過ごすなどの工夫で時間を確保
・休日は公園や散歩などアウトドアの時間を意識的に作る

2. 低濃度アトロピン点眼(推奨度:高)
0.01〜0.05%の低濃度アトロピン点眼は、子どもの近視進行を30〜50%抑制するとされています。就寝前に1日1回点眼するだけという手軽さも魅力です。副作用も少なく、眼科で処方してもらえます。
ただし保険適用外のため、月2,000〜5,000円程度の自費がかかります。しかし、将来的な強度近視のリスクを考えると、十分に価値のある投資と言えます。取り扱いのある眼科で相談してみましょう。
3. オルソケラトロジー(推奨度:中〜高)
夜間に特殊なハードコンタクトレンズを装着して角膜の形を矯正する方法です。日中は裸眼で過ごせるだけでなく、近視進行の抑制効果も報告されています。特に子どもの近視進行抑制に有効とする研究が増えてきています。
月額5,000〜15,000円程度の費用がかかりますが、手術不要で可逆的(やめれば元に戻る)という安心感があります。
4. 多焦点コンタクトレンズ(推奨度:中)
特殊な設計のコンタクトレンズで、周辺部の網膜に届く光をコントロールして近視進行を抑制します。研究段階のものも多いですが、今後の有力な選択肢として注目されています。
5. 特殊設計のメガネレンズ(推奨度:中)
近年、近視進行を抑制する効果がある特殊設計のメガネレンズも開発されています。装用の手軽さという点では、子どもにとって最も負担が少ない方法です。眼科で取り扱いがあるか相談してみましょう。
低濃度アトロピンやオルソケラトロジーなどの治療法は、必ず眼科医の指導のもとで行ってください。自己判断での使用は危険です。また、効果には個人差があり、すべての方に同じ効果が出るわけではありません。
日常生活でできる対策
近業時間の管理
スマホやPC、読書など近くを見る作業は、30分ごとに休憩を入れましょう。子どもの場合は特に、1日のスクリーンタイムを管理することが大切です。目と対象物の距離は30cm以上を保つようにしましょう。
適切な環境づくり
読書やPC作業時の明るさは300〜500ルクスが目安です。目と本やモニターの距離は30cm以上離しましょう。姿勢を良くして、目の高さとモニターの位置を適切に調整することも重要です。
バランスの良い食事
ルテイン、ビタミンA、DHA、アスタキサンチンなど、目の健康に関わる栄養素をバランスよく摂りましょう。緑黄色野菜と青魚を意識的に食べることが大切です。

近視が強度になるとどうなる?
強度近視のリスク
近視の度数が-6.00D以上(視力0.1以下相当)の強度近視になると、網膜剥離、緑内障、黄斑変性症などの合併症リスクが上がります。これらの病気は最悪の場合、失明につながる可能性もあります。だからこそ、できるだけ近視の進行を抑えることが大切なのです。
定期検査で合併症を早期発見
強度近視の方は、半年〜1年に1回は眼底検査を受けましょう。日本眼科医会でも強度近視の定期検査の重要性が案内されています。自覚症状がなくても、定期的な検査で早期に異常を見つけることが視力を守る最善策です。
よくある質問(Q&A)
Q. 大人になっても近視は進行しますか?
はい、大人でも近視が進行するケースはあります。特にデスクワークが多い方や、スマホの使用時間が長い方は注意が必要です。20代後半〜30代でも近視が進行する方は珍しくありません。
Q. 低濃度アトロピン点眼に副作用はありますか?
低濃度(0.01〜0.05%)のアトロピンは、高濃度のものに比べて副作用がかなり少ないとされています。瞳孔が少し広がることによるまぶしさが起こる場合がありますが、就寝前の点眼なので日常生活への影響は最小限です。
Q. オルソケラトロジーは何歳から始められますか?
一般的には6〜7歳頃から始められるとされていますが、クリニックによって対応年齢は異なります。眼科で相談して、お子さんに適しているかどうか判断してもらいましょう。
Q. 近視進行抑制の治療はどの眼科でも受けられますか?
低濃度アトロピンやオルソケラトロジーなどは、すべての眼科で取り扱っているわけではありません。近視進行抑制に力を入れている眼科やクリニックを探して受診するのがよいでしょう。

まとめ:近視進行は抑えられる時代
近視の進行を完全に止めることは難しくても、屋外活動の増加や低濃度アトロピンなどで進行速度を遅らせることは可能です。特に子どもの場合は、早い段階から対策を始めることが将来の目の健康を大きく左右します。
眼科で相談すれば、お子さんや自分自身に合った進行抑制法を提案してもらえます。e-ヘルスネットの健康情報も参考にしながら、目の健康を守っていきましょう。

